「きさげ」のお話 3
きさげの工程 ~加工-測定を繰り返して精度を追い込む~
第2話で説明した摺動面の加工を例にとって、きさげの工程を説明します。
- オートコリメータで加工面の状態を確認します。(図1)
【図1】
- ”1”で確認した測定値に基づいて、出っ張っている部分を荒取りしていきます。(図2)
【図2】
- オートコリメータで加工面の状態を測定し、目的通りのカーブに加工されているかの確認を行います。(図3)
【図3】
- 目的通りのカーブになるまで、きさげ-測定を繰り返していきます。(図4)
【図4】
このように、きさげ加工は加工-測定を繰り返しながら精度を高めていく、非常に手間がかかる工程です。
しかし、それだからこそ、きさげ加工は機械加工では得られない高い精度を実現することができるのです。
真直度を測る ~オートコリメータについて~
オートコリメータは微小な角度を測定する装置で、図5のような構造をしています。
【図5】
光源から出た光は対物レンズで平行光となり、ミラーで反射され戻ってきた光が接眼レンズで像を結びます。
ミラーの角度がずれれば戻ってくる光はそれに応じてずれるため、像のずれを測ればミラーの角度がわかるというわけです。
【図6】
角度は1秒(=1/3,600度)以下という単位で読み取ることができます。
摺動面に置いたミラーを一定間隔で移動し、そのポイント、ポイントでの角度をプロットしていくことで摺動面の真直度を測ることができます。(図6)
きさげにもランクがある ~”あたり”について~

【図7】ジグボーラー摺動面のきさげ面
面と面の接触具合は、きさげのきめ細かさによって決まります。「あたり」というのは摺り合わせした後に1インチ四方(「一坪」とも言います)にどれだけの接触部分があるかを表します。「坪あたり10個」とか「坪あたり20個」などと言います。当然、あたりの数が多ければ多いほど面と面の接触具合が良くなり、高精度になります。
技能・経験が高度に融合した匠の技

【図8】使い込んだ「きさげ」(工具)。柄の部分が磨り減って凹状になっている。
一人前のきさげ職人になるには長い年月がかかります。卓越した職人はどれくらい加減すれば1μmの除去量になるのかを体で覚えています。
これほど微妙な作業になるため、温度変化は大敵です。鉄は1℃の温度変化で1mあたり約0.01mm伸び縮みしますので、わずかな温度差があっても精度を出すことができません。昨日仕上げが終わったのに今日測定してみたら精度が出ていなかった・・・などということになると、いつまでたっても機械が完成しません。三井精機が一定温度の環境化でモノづくりにこだわるのは、このような理由があるからです。
きさげ面の微妙な模様はきさげ職人によって違うため、きさげ面を見ただけで、誰がきさげを行ったのかがわかるほどです。
また、「きさげ」(工具)の刃物部分は使うと磨耗してきます。そうなると研ぐ必要がありますが、これはきさげ職人自らが行います。研ぎ方は荒取りか、仕上げかによって違いますし、人によっても千差万別です。その人が最もやりやすい形状や角度に研ぎます。きさげを研げるようになるにも、やはり長い年月がかかります。
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